重文見聞録6 三河家住宅

今回は徳島県徳島市の街中にある重要文化財「三河家住宅」と取り上げてみたいと思います。

 

 


 

●三河家住宅の概要

三河家住宅の概要については下のリンクをまず読んでくださいませ。

三河家住宅→(Wikipedia)

 

この家は昭和3年に建てられた3階建て鉄筋コンクリート造住宅で、建築主は産婦人科医の三河義行さん。彼はドイツ留学中に木内豊次郎さんと仲良くなり、帰国後に住宅の設計をしてもらったようです。

 

しかし、実はこの木内さんは建築の勉強をしにドイツに行っていたわけではなく、土木の勉強をしに行っていたと言います。

 

その当時のドイツは土木技術では世界の最先端を行っており、それを勉強して帰った木内さんが建てたこの三河家住宅もまた基礎やコンクリートが強固にできています。JRがすぐ裏側を走っている割にはコンクリートの傷みが少ないのはそのためだといいます。

 

そういう技術的事情とは関係なくこの三河家が重文に選ばれたのはその独特の意匠性なのだそうです。

【入口。アールデコの影響が感じられる】

 

●三河家のポイント

私が勝手に判断したところ、この三河家には大変面白いところが3つあります。

①デザイン的に個性的である

②詳細が不明なところが多い

③建築当初の状態が残っているところが多い(約90年前、2018年現在)

 

①については、設計した木内さんが建築の専門家ではなかったので、洋風建築ではあるものの装飾をざっくばらんに取り入れた結果なのではないかと想像します。

【庭にある象の石像】

 

②についてですが、三河さんも木内さんも実はそんなに有名な人ではなかったらしく、資料が少ない上に空襲で焼けてしまい、不明なところが多いままであるようです。著名な人でたくさんの建築を手掛けていればもっと資料が残っていたはずだからです。

【屋根の上のガーゴイル。パリのノートルダム寺院の模倣だろうか】

 

 

③について。この三河家住宅はもともと個人の持ち物だったのですが、しばらく空き家になり、今は徳島市の持ち物になっています。原則一般公開されておらず修復もされていません。

 

基本的に重文は多少なりとも修復されていることが多いです。特に内装材というのは、傷むと見苦しいので当時を模して直されているものが多いです。

 

一般公開されるとなると、たぶん建築当初の状態になるべく近づけるような形でリフォームされると思いますが、今はまだ廃墟のような状態ですので、逆に当初の状態が残っています。

【3階から見下ろした階段室。天井からいたるところに雨漏りの跡】

 

長々と解説をしましたが、では中を見ていきましょう。では、冒険スタート!

 

 

●玄関・階段周り

玄関入ったら土間には白と黒の大理石の市松張り。写真ではわからないけどもそれぞれの石がひし形にデザインされています。

 

また階段ホール周りの床はタイル張りです。

 

 

 

【玄関回りのステンドグラス】

 

【玄関の照明】

 

階段周りも装飾が施されています。

 

 

階段は真ん中の赤いところはコンクリート、両端が石でできています。

 

 

 

【階段室の照明】

 

●2F部分

【二階のバルコニーへの出口扉付近の装飾】

 

【2Fバルコニー】

 

バルコニーの出入り口にもアールデコっぽい装飾が施されています。

 

 

二階にはビリヤードルームと和室が併設されており、こういう間取り方も珍しい気がします。

【左がビリヤードルーム、右が和室】

 

和室は奥様のための部屋だったそうです。

 

 

【和室の床の間】

 

床の間の地袋の建具も独創的です。

 

こちらはビリヤードルーム。

 

【ビリヤードのスコアボード】

 

 

ビリヤードルームはカーテンも傷んでいました。しかし、照明もなかなかいい感じ。

 

【ビリヤードルームの照明】

 

●1F部分

お風呂はどこからインスピレーションを得たのか分かりませんが、意外にかわいらしいデザインがほどこされていました。

 

浴槽のバックに熱帯魚の水槽のようなデザインが。(写真ぼやけててすいません)

 

窓にもすりガラスで熱帯魚が泳いでいます。

 

風呂の扉のガラスにもプチステンドグラスが。

 

●1F居室。

三河住宅のなかでも特に建築当初の状態が残っているのが1F居室です。

 

たぶん産婦人科の待合室にも使われていたのではないかと思う部屋です。

 

 

【待合室の照明器具】

 

暖炉の左脇にエアコンがついているのが残念な感じです。しかしこれが残っているのも修復されていない証拠ですね。

 

●90年前の壁紙を発見!

 

 

【床は寄木張り】

 

そして1Fの居室をみているうちに大きな発見をしました。なんと90年前の壁紙を発見したのでした!

 

以上の壁紙、なんと建築当初の物であるようで、後日とった写真をインテリア文化研究所さんに送ってみてもらったところ、どうやら英国製の「リンクルスタ」である可能性が高いようです。

 

リンクルスタは床材のリノリウムを壁紙にしたもので、耐久性も大変高く、90年たっても残っていたのでしょう。現在主流のビニール壁紙で90年持つことはまずありえないでしょう。

 

 

また2階にも一部当初の壁紙が残っているのですが、これはいまのところまだ不明です。


 

 

いかがだったでしょうか?

 

この三河家住宅、専門家からすればB級の建物かもしれません。ごちゃまぜで統一感に欠け、設計者も無名で、建材に希少価値のあるものや最高級のものを使用しているわけでもなさそうです。

 

しかし私はこういう建物が大好きです。いや、こういう建物を探すために重文を回っているのかも知れません。

 

私は京都迎賓館(2005年開館)も内覧させてもらいましたが、人間国宝最高峰と言われる職人の作った装飾や工芸品ばかりでした。確かに非の打ちどころがない、完璧なものだと思います。

 

しかし不遜を承知で書かせてもらえれば、面白味はなかったなというのが正直な感想です。絶対に文句の言いようのないキャスティングで、文句の言いようのない素材を使って建てた京都らしい建物は意外性がないからに他なりません。

 

大御所のハリウッドスターばかり集めて有名監督を使えばそれなりの高評価の映画にはなるのがわかりきっています。

 

一方個人の住宅は個性的で意外性に富んでいます。何を考えてこれを作ったのか考えることは大いに想像力を刺激してくれます。まるでアートを見ているようです。

 

一応私は建築の職人ですが、本格的に建築の学校に通ったりしたわけではないのでその辺差し引いて考えてくださいね。

                           

【庭に腰かけている石像。ロダンの考える人をモチーフにしてるようにも見えるが、あまり考えてるように見えないため「考えない人」と勝手に命名】

 

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三木町渡邊邸にて ~重文見聞録番外編