香川県のみなさんは香川県立体育館というとどんなものか思い出せますか?ピンと来ない方も”船の体育館”と言えばわかる方がたくさんいるのではないでしょうか。
この船の体育館は1964年竣工の「世界のタンゲ」こと建築家丹下健三氏による作品です。
丹下健三氏は日本人建築家として初めて世界的に認められた人で、多くの国家的プロジェクトの建物を手掛けた戦後の建築家の第一人者であり、代表作に東京オリンピック国立屋内総合競技場(現在の代々木体育館)などがあります。
【現在の代々木体育館】
この香川県民に親しまれてきた船の体育館、実は2014年9月末で閉館しており、取り壊しの危機にあることをご存じでしょうか?
先日、香川県立体育館保存の会主催の「船の体育館展」に行ってきました。
●船の体育館展「いままでとこれから」
2018年3月24日(土)~4月8日(日)
11:00~18:00(毎週土曜日と最終日は20:00まで)
高松市田町商店街毎日屋ギャラリーにて(高松市田町3-13 1F)
この展示会では体育館の再利用法案や建築当時の写真展、体育館の模型だけでなく自分で作って楽しめる船の体育館ペーパークラフトコーナーもあります。
【上記の3Dプリンター模型にマスキングテープを張り付けて型をとり、ペーパークラフトの型紙を作ったそうです。】
【ホワイトボードには寄せ書きのようなものが】
【建築当時の白黒写真もたくさん飾られてました】
【職人の私には、今も昔もあまり変わらない職人の姿にリアリティを感じました。】
香川県立体育館保存の会は建築家を中心にさまざな職業や一般の方まで幅広い人たちで構成されていて、この名建築を有効活用することで残していこうという活動をしている団体です。
ちなみにこの体育館はワールドモニュメント財団が、保存すべき建造物に対して選定する2018年の「世界危機遺産」25か所のうちの一つにも選ばれています。
●閉館に至った経緯
2012年の調査で震災時にアリーナの天井板が落下する危険性があることが判明。その後耐震工事の入札が3度行われたが、工事の難しさのためか不調におわり、4度目では入札者がおらず、2014年6月についには改修を断念して閉館することがきまりました
しかし、体育館というのは震災時の避難場所に指定されているために耐震基準が高く設定されており、体育館以外の用途であれば耐震補強をすることで十分この名建築が残せるというのが保存会の一つの提案です。
【左右に一つずつある雨どいは雨の日に滝のようになって石の上に降り注ぎます】
●建築として
この体育館は見ての通り面白い形をしていますね。
当初、構造計算上問題がないとされていたにも関わらず建築中に船の突き出した部分が強度不足ということになり、一時工事がストップしたことがあるらしいです。
そこでプレストレスト・コンクリートという技術を使うことによってこの問題をクリアーしたそうです。
プレストレスト・コンクリートとはコンクリート製の橋などでよく使われる技術で、簡単に言うとコンクリートの中にワイヤーのようなものを通して中心に向かって引っ張るようにするのだそうです。
そうすることでコンクリートのひび割れを防ぎ、強度が増すのだそうです。当時建物にこの技術を使うというのは珍しかったそうです。
この名建築を残すべきだと思う人はぜひ展示会に足を運んで保存活動の署名に協力してあげてください。
個人的な見解ですが、現在竣工から50年余りが経っていますが、建築家の知名度といい、この他に類を見ない独特のフォルムといい、今後何十年と年数が経っていくにつれてこの名建築の価値は上がっていくのではないかという気がします。
今すぐに採算が合うかどうかのはなしではなく、(といっても莫大な費用がかかるものでもないようです。)将来の観光の一つになりうるということも視野に入れて考えるといいのではないでしょうか。
建築物としての50年というのはまだまだ芽が出たばかりで、花が咲き、実がなるまでに摘み取ってしまうほどの必要性があるとも思えませんので。
●参考 香川県立体育館保存の会
0120-6969-33
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